平智之の活動ブログ

2013年2月

バックフィットが「安全宣言」の製造装置になるリスク

2013年2月17日 16:39


地震では大丈夫だったと東電が映像を公開
 東電が昨日(15日)、1号機4Fの「非常用復水器(IC)」の映像をはじめて公開し、地震によるICの損傷説を否定したそうです。ICが壊れてないということを目視したことになります。ICとは、すべての電源がなくなっても冷却をすることができる装置で、これが3.11の際に動かなかったので、一気にメルトダウンへ向かいました。もしICが動いていたら、メルトダウンまでの時間をもっとかせぐことができました。国会でも大変な問題となりました。

地震か?津波か?の論争のポイント
 なぜ東電は懸命に「地震では大丈夫だった」と主張するのか。それは廃炉の可能性が増えるからです。もし地震でダメだとわかれば、今年の7月から施行される予定のバックフィット制度(たとえ運転中の原子炉であっても、その時々の世界最新の水準に合わせるよう改良を求めることができ、もしで改良できないときは廃炉を命じることができる制度)により、既設の原子炉のIC関連装置をすべて補強しなければなりません。しかし、それが技術的・経済的に不可能なら廃炉せざるをえなくなるのです。だから、なんとしても「地震では壊れなかった」、「津波対策をすれば大丈夫だ」と結論したいのです。

ICの破壊は映像ではわからない
 そこで映像で「ICはこのように壊れていません」と見せるのですが、疑問です。ICが壊れているかどうかは、目で見てわかるような明らかな破損だけでなく、冷却水が漏れる微小な亀裂や破口が配管に生じていないかどうかのチェックも必須です。国会事故調の報告書もLOCA(冷却水喪失事故)として、そのような見解を述べています。これは映像でのあらっぽい目視でチェックすることではありません。

バックフィットの問題点
 以上のようなことが、バックフィットの問題点の一例です。バックフィッ制度は、今年の7月から施行される予定で、たったいま、その新安全基準案が公表され、意見公募にかけられています。理念は素晴らしい制度なのですが、現実的には危険の隠ぺいに貢献してしまう点にも注意しなければなりません。今回のように、「地震では大丈夫だった」となれば、ICの耐震性を強化する要請はバックフィットの基準に入りません。肝心の問題を「全部津波のせいだ」としてしまえば、「防潮堤」(しかも、今すぐは無理なので、あと数年後にといういい加減さ)だけで問題解決となってしまいます。バックフィットの対象となる技術基準のハードルを下げて、バックフィットを形骸化して、そして規制委員会も政治家も「安全宣言」してしまうのです。バックフィットそのものが「安全宣言」の製造装置になってしまうリスクです。バックフィットが安全宣言の根拠である点に注意を払わなければなりません。国会は、この点を厳しくチェックすべきです。

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