平智之の活動ブログ

2013年11月

【報道ウォッチ9】被災者に説明できないなら秘密保持は無理

2013年11月26日 01:48

【平智之の報道ウォッチ9】秘密保護法案、明日26日に採決の構えとの報道。閣議決定したら政府は止まらない。今国会での廃案が困難なら、なんとか継続審議で来年の通常国会へ送り、そこで特定秘密部分の修正を目指せないか。

●閣議決定の重み
秘密保護法案は閣議決定された閣法だ。閣議決定とは、政府の長である首相が招集する閣議で閣僚の全会一致のもとになされる行政の最高意思決定となる。だから与党のトップ(総裁)と政府のトップ(首相)が同一人格である現在の一元的な議会では、閣議決定された法案を過半数の与党が可決しない(=廃案にする)という手続きが成立しない。

●廃案は内閣不信任案可決と同じ
秘密保護法案が本会議で採決に付された場合、それが可決しない(=廃案になる)事態とは、本会議で過半数の与党が法案決議で反対多数になるということ。それは自民党の議員が政府の長(首相)に対して反意を示すと同時に、同一人格だから、自らの党の長(総裁)と全会一致した閣僚にも反意を示すことになる。まるで自民党が内閣に対して不信任決議案を出し、なおかつ可決するのと同じだ。現在の政局でこれは起こらない。

●私は現行法で対応可能という立場
【報道ウォッチ7】でも述べたとおり、私は国家の秘密保持は必須だが、すでに存在する国家公務員法の秘密保持規定に加えて新たに"特定秘密"というものを指定する上乗せの規制法制は必要ないという立場だ。現行法(国家公務員法と情報公開法と公文書管理法)を一括で部分修正すれば新規立法しなくても規制強化できると考える。

●特定秘密の指定を削除できないか
たとえば現行の秘密保護法案は来年1月からの通常国会に渡し、与野党協議のなかで、最高懲役年数の規制強化(1年から10年へ)などはそのままにして、「特定秘密の指定」の部分だけを現行法の機密保持規定の枠内に戻す修正が施せないだろうか。

●被災者の納得がなければ秘密保持も無理
本日25日、福島公聴会が行われ「福島市民の怒り」との報道。その翌日に、いきなり特別委と本会議で採決の構えとの報道。あまりに理不尽だ。浪江町長からはSPEEDIの情報が適切に開示されず、避けられたはずの被ばくについて厳しい指摘がなされたとのこと。「知らされなかった」という深い憤りを持つ被災者に向けて納得の説明ができないなら、それはやはり特定秘密の指定が曖昧で恣意的であることの証左となる。それはさらに本来の本法案の趣旨である「秘匿すべき情報の保持」も曖昧になるというリスクでもある。

【報道ウォッチ8】SPEEDI情報と秘密保護法案

2013年11月23日 23:45

【平智之の報道ウォッチ8】来週、秘密保護法案の地方公聴会が福島市で開催との報道。原発関連情報が特定秘密に指定されるリスクを審議する。非常に重要。この際SPEEDI非公表の真相究明が有効ではないか。鈴木寛元副大臣に権限はなかった、官邸でどのように隠れたか、等。

●具体的な事案で審議する
原発関連問題が特定秘密に指定される可能性を知る上で、結果としてSPEEDIが避難指示に活用されなかった重大な事実の原因究明が有効だと思う。なぜ官邸から情報が出てこないのか?これを一般論で議論すると総論で終わる。こういう問題は個別具体の事案で審議して欲しい。

●「知らなかった」も「役に立たない」もない
原災法の緊急事態宣言が発動された後、文科省によるSPEEDIの計算結果は官邸に報告される規則だから、官邸が「知らなかった」はない。「役に立たないと聞いた」という発言も当時官房長官からあったが、SPEEDIの計算結果には時々刻々の放射能の拡散方向が明確に示されていた。避難指示の役に立たない訳はなかった。実際、現地対策本部では放射能モニタリングカーがSPEEDIの計算結果に基づいて放射能の拡散方向の風下に回って計測している。同じ情報が官邸にも報告される規則なのである。(報告されていなかったら、それはさらに重大な問題となる)官邸が、どのような事態で、どのように情報を出し渋るのかという問題の構造を具体的な事態で把握することが有効だ。

●文科省ではなく官邸
なお、SPEEDI情報の非公表について、鈴木寛元文科副大臣の意図があったかのような誤報が一時流れていた。理由はSPEEDI運用の所管省庁の担当副大臣だったから、というようなものだったと思うが、多くの方々が指摘していたとおり、それはない。文科省の仕事はSPEEDIの運用(拡散予測を計算すること)であり、その計算結果の活用(公表であれ非公表であれ避難指示であれ)は官邸の仕事だ。結果として避難指示に活用されなかったという事実は、やはり官邸での情報管理と判断に起因する。特定秘密の指定に関しては、誰の秘密なのか?誰が指定するのか?などの機関も議論になる。上述のような誤解が起こりえることも、重要な事実として抑えておくべきだと思う。

【報道ウォッチ7】秘密保持の規制強化は既存の法律で

2013年11月19日 23:42

【平智之の報道ウォッチ7】秘密保護法案の与野党協議が大詰めとの報道。私は十分に議論をフォローできないままだ。そもそも、なぜこのような特例法が必要なのか理解できていない。「特定秘密」など持ち出さなくても、国家公務員法、情報公開法、公文書管理法の一部改正(一括法)で十分ではないか。

●国家公務員法でいいのでは?
今回の秘密保護法案の報道で「機密を漏らした国家公務員の厳罰化」という見出しをよく見る。私は、それならば国家公務員法の守秘義務規定の一部改正で良いと思うが、内閣委員会ではどのような議論がなされてきたのだろうか。

●有識者会議は違うと言う
有識者会議は報告書(H23年8月)*1で「本法制は、国の利益や国民の安全の確保といった観点から特別秘密の漏えいを防止することを目的としており、主に服務規律の維持を目的として守秘義務を定める国家公務員法等とは趣旨が異なるため、国家公務員法等の改正により本法制を実現することは適当ではない。」としている。つまり「国家公務員法ではやりません、新たな法律が必要です」と結論している。この点が私にはよくわからない。

*1 『秘密保全のための法制の在り方について(報告書)』、平成23年8月8日、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議

●服務規律で特別秘密を守ればいい
「国の利益や国民の安全の確保といった観点」と「服務規律の維持」が異なる趣旨なのだろうか。なぜ国家公務員法第百条で「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と規定しているか。それは国家公務員に課せられる国の利益や国民の安全の確保という職務のためであろう。特別なことを考えずに、ストレートに国の利益や国民の安全の確保のために、国家公務員法のなかで国家公務員の守秘義務を厳罰化すれば、有識者会議が求める「特別秘密の漏えい」が防止できる。

●国家公務員法での厳罰化でよいのでは?
つまり、今回の秘密保護法案では特定秘密を漏らした場合は最高十年の懲役と厳罰化しているが、もともと国家公務員法第百九条第十二号には秘密を漏えいした国家公務員に対して「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」という刑事罰が用意されているので、それを一年⇒十年へ強化すればよいのではないか。

●指定秘密は不要となる
その際、政府がわざわざ「特に重要な秘密」を指定しなくても、国家公務員が職務上知ることのできるすべての秘密で漏えいを厳罰化(最高懲役年数と罰金上限)しておけば、それで済む。国家公務員法第百条関係に絞っておけば、国家公務員以外の一般人が処罰対象になるのではないか?といった懸念も生じない。

●指定秘密の解除30年も既存の法律で
指定秘密の解除期間についても同様だ。
(1)国の安全
(2)外交
(3)公共の安全及び秩序の維持
のうち、(1)については自衛隊法第96条で防衛秘密に指定できるが、(2)と(3)については現行法がないので、(1)も含めて、まとめて秘密指定できる新規立法が望ましいと政府は主張している。だから秘密保護法案が必要なのだとするのだが、これも私にはよくわからない。そもそも行政行為で作られる文書であるなら、それらは行政文書であり、ならばどのように開示or不開示して、どのように管理するかといったルール化は、行政文書の公開と管理を規制する情報公開法と公文書管理法でまとめてルール化すれば済むのではないだろうか。安全保障、外交、安全・秩序は行政文書という入り口でもともと一つだ。(1)(2)(3)について情報公開法で開示文書と不開示文書の基準を、そして不開示となった文書が何年後に開示されるかを公文書管理法で、それぞれ統一ルール化すれば済む。

●初歩的な議論に理解と納得を
私は委員会での審議や法制局の問題整理を知らないから、おそらく初歩的な議論をしているのだと思う。しかし、これほど強く深く国民の権利に触れる法案である以上、私を含む初歩的な問題意識を有する国民の納得と理解を醸成する時間が必要だ。秘密保護法案の必要性を説く有識者会議の報告書でさえ「ひとたびその運用を誤れば、国民の重要な権利利益を侵害するおそれがないとは言えない」と警告している。あと二週間での法案可決はあまりに拙速と言わざるをえない。

●私権の制限に踏み込んでしまった
全体として今国会の秘密保護法案は「特定秘密」という仰々しい用語を用いて、もともと国家公務員の秘密保持の問題なのに、国民を私権の制限の条件闘争に持ち込んでいるような感じがする。だから議論が必要以上にややこしくなっているという印象だ。上述したとおり、特別も一般もなく、ダメなものはダメというシンプルなルールでいけば、国家公務員が作る公文書に限定することで、既存の法律ですべて対応できるように思える。

●3年後の選挙で問えばどうか
最後に一言付け加えたいが、そもそも本法案は自衛隊法、国家公務員法、情報公開法・公文書管理法等の一部規制に上乗せ規制を行う"特例法"であるから、どうしても急いで新規立法を強行するなら"時限立法"にすべきだと思う。3年後の凍結を本法に書き込んでおく。3年間施行してみて、本当に必要かどうかを3年後にもう一度考える。3年後に選挙の争点の一つにすればいい。国家機密を守ることは必須だが、機密保持の規制法制は常に国民の監視の下にあらねばならない。

【報道ウォッチ6】最新鋭と安全は関係ない

2013年11月17日 23:40

【平智之の報道ウォッチ6】11/16、石破幹事長が「安心・安全が最高度に確保された最新鋭の原発を全面否定することには理論的にならない」と発言したとの報道。理論的ではない。原発に関して最高度・最新鋭と安心・安全とは関係がない。

●バックフィットに要注意
何度も指摘してきたが、「その時点の世界最高水準の安全基準を満たせば再稼働、新増設してよい」という現行のバックフィットのしくみは詭弁そのもの。スリーマイル、チェルノブイリ、福島と10年に1回過酷事故を起こし、安全性の向上はあっても安全性の確保ができない原発で、世界約430基のなかから最高の水準を取り上げても何の意味もない。世界最高水準が危険だという点を無視している。

●放射能は漏れるという前提
実は自民党政権になって原子力規制行政は大転換している。従来の「過酷事故は起こさないようにする」から「過酷事故は起こりえる」への大転換だ。田中規制委員長は平成25 年3 月27 日の記者会見で「(100テラベクレルを)規制基準に反映していくとか、そういうための一つのメルクマールみたいなものです。」と発言している。「別に100テラまでは出してもよいというわけではない」などの発言もあるが論理破綻している。100テラを技術基準に取り込む以上、紛れもなく今後の原子力規制行政では放射能漏れの過酷事故を前提とするという意味だ。

●もう原子力は終わりだというプレッシャーを
以上に述べたとおり、現在の日本の原子力規制行政は放射能が炉外に漏れる過酷事故が「起こりえる」という前提で動いている。規制委員会が「起こりえる」と言っているのだから、万一事故が起こったら、あとは政治の責任だと丸投げしているのと同じだ。政治はこの点をもっと追究すべきだと思う。規制委が再稼働及び新増設の安全審査にOKを出して、政治がその判断を尊重して決断して、もし放射能漏れの事故が起こったら、「もう原子力は終わりだ」というプレッシャーを規制委に与えないと、規制委は従来以上に無責任な主体になるという点を見逃してはならない。

【報道ウォッチ5】なぜ新燃料がプールなのか?

2013年11月16日 23:38

【平智之の報道ウォッチ5】来週4号機の燃料プールから供用プールへ移動開始。まずは新燃料からとの報道。素朴な疑問だが崩壊熱のほぼない新燃料をなぜスペースが厳しい供用プールへ?乾式キャスクで中間貯蔵ではだめなのか?本当に新燃料なのか?私の考え違いなど教えて欲しい。

●使用済み核燃料はすごい熱をだす
使用済み核燃料は燃焼度にもよるが表面の空間線量は10万Svを超えるレベルにも達するとされる。数秒でも命に関わる放射能だ。線源は運転による核分裂で燃料のなかに発生する核分裂生成物(セシウムやヨウ素を含む)の放射能。放射能と同時に熱(崩壊熱と呼ばれる)を出すので、ほっておくとメルトダウンして大量の放射能を放出する大惨事となる。だから使用済み核燃料は、空冷できるくらいの発熱量になるまでの数年間、プールで水に浸して冷却される。

●新燃料はそんな熱を出さない
しかし未使用の新燃料は核分裂していないので燃料内部に核分裂生成物が作られていない。表面の空間線量は数十マイクロSvとされ、これは使用済み核燃料(ex.10万Sv)の10億分の1のレベル。崩壊熱の原因である核分裂生成物がほぼないのだから発熱もほぼないことになる。プールに浸す必要はないと思うが。

●4号機の新燃料はなぜプール?
そこで冒頭の疑問が生じる。それでなくても地上の供用プールはスペースがなく、4号機の燃料を搬入するために、すでに発熱が小さくなった使用済み核燃料を乾式キャスクに入れて別の中間貯蔵施設に運び込む計画だ。なぜそんな状況下で新燃料をプールに入れるのか。同様に乾式キャスクではだめなのだろうか。何か知らないことがあるだろうか。

●むしろ水が怖くないのか?
むしろ万一の臨界を回避するために水に浸さないほうがよい(水が中性子の速度を減速させて連鎖反応を起こしやすくする)とも思えるが、そのあたりはどうなのだろうか。政府がメルトダウンを認めた当初、溶けて形状の変化した溶融燃料に水をかけることについて、再臨界を懸念する識者がいたと記憶する。

●確認してもらいたい
臨界の懸念はさておき、崩壊熱のほぼない新燃料をスペースが厳しい供用プールに入れる点については、なんらか理由があるのだと思う。まずは規制庁の説明が聞きたい。さらには専門家の知見も知りたい。技術的な関心と知識を有する議員に確認してもらいたい。素朴な疑問であっても、こうした細部の地道な確認作業から重要な事実がわかることもある。

【報道ウォッチ4】ホンモノの議員立法を

2013年11月13日 23:36

【平智之の報道ウォッチ4】昨日13日、電力改革の法案が可決。しかし法改正は単なる入り口。原発ホワイトアウトp13⇒「素人の政治家や記者には小売り自由化や発送電分離の制度設計の細部の書きぶりによって、電力会社の独占力がどれほど維持されるのかなど、わかりはしないのだ。」

●絶対に細部は渡さない
現役経産官僚が執筆したとされる小説「原発ホワイトアウト」には、上掲に続けてこうある。「この電力システム改革のゲームには、電力会社や政治家が参戦する。しかし、制度の細部の決定権を最後の最後まで渡さないことが官僚のパワーの源泉なのだ。」そのとおりだ。以下に、すこし細かい話で読みづらいと思うが、「やったフリ」の掛け声だけに終わらない電力システム改革のための「ホンモノの議員立法」について述べたい。

●理念ではなく手続き
議員在職中、私も官僚から言われたことがある。「議員の皆さんには国の方向性の大枠を示していただきたい」「細かいことは我々に任せてください」と。そして「責任はこっちが取る、後は君たちに任せると言ってくれる政治家が立派な政治家だ」と。危ない。そういう法制度分野も確かにあると思うが電力システム改革には当てはまらない。システム改革は理念法ではない。「改革=手続き」そのものであり、改革の成否はすべて細部に宿る。改革したくない官僚に細部を任せたら改革はほぼ間違いなく張りぼてになる。「やったフリ」で終わる。

●数百の地域発電・送配電会社の育成
私は今回の電力システム改革ブームで、政治家が「60年来の電力独占に風穴を開けました!」と有権者にアピールするだけで、実態はお茶を濁すばかりか、場合によれば電力独占をさらに深化させて巨大化させてしまうリスクすら懸念する。もちろん私は発送電分離に賛成だが、それは政治が細部の煮詰めで官僚と一緒に汗をかく前提だ。地元に帰って「皆さん私がやりました!」と有権者アピールだけして実際に汗をかく気がないなら、発送電一体のままで発電・送電・配電をまとめて規制強化するほうが有効だろう。支配構造が連携してバラバラに存在したらかえって規制しにくい。重要なことは、発送電分離は誘導政策の選択肢のひとつであり、最終目標は戦前のごとく数百の地域発電・送配電会社を存立させるような市場の育成(小さい電力会社を優遇する非対称規制)だろう。

●申請の書式や検査のチェックリストに現れる
こうした法制度の細部論は、議員在職中も何度も主張してきたつもりだ。拙著「禁原発と成長戦略」(明石書店)p128でも「運用の細部を見なければ法律はつくれない」と題して次のように書いた。「法律は大枠であり、法律の実態はむしろ行政内部で策定される内部規則(告示、要綱、要領、運用ガイドライン等)にありました」「法の実効は法律の条文より申請用紙の書式や検査業務のチェックリストなどに表れます」と。

●ストーカー規制法の細部へ
同じく拙著「なぜ少数派に政治が動かされるのか?」(ディスカヴァー携書)p148には厳しい表現だが議員立法についてこう書いた。「官僚としては「先生の顔をたててやっておきました」といった程度の法律もあるだろう。法律のプロ集団である官僚からすれば、陳情・要望を受けて、偏った知識と理念だけで立法しようとする国会議員の法案など、その程度にしか見えない(後略)」。「(議員立法である)ストーカー規制法にしても、それで悲惨な事件がなくなったかというと、残念ながらそうではない。(中略)その理由は(中略)警察内部の手続きまで規則化できていないからだと思う」と。もちろんストーカー規制法は極めて重要な法律で、議員立法ならではの貴重な立法だが、引き続く事件を考えるなら、政治が立法時に戻り、あらためて関係部局の官僚とともに細部の煮詰め直しをすべきではないのか。「誰が悪い」ということとは別に、早急に「警察の現場が動きやすい規則と予算」をどうやってつくるかという細部の議論が求められていると思う。

●立法の空中戦
国会議員が実効性のある法律策定に関与しない(できない)という現状は根が深い。議員立法の場合、まず有権者が立法者である国会議員に陳情・要望して「法律を作ってもらおう、変えてもらおう」と地元事務所で、あるいは東京の会館で訴求する。その議員が与党幹部なら政府の閣議決定案件(政府がやると決める法律=閣法)になるかもしれないが、それは稀であり、どうしてもというなら「議員立法で」となる。しかし官僚からすれば、それが閣法と同様の予算根拠のない議員立法であれば適当に考えるだろう。議員立法は、実はほとんどが時間切れの廃案になるが、たとえうまくいっても理念だけの張りぼて法になりがちである。理念は素晴らしいが実効性が伴わない。そして、官僚も議員も細部の煮詰めをやらずに表面的にお茶を濁したにも関わらず、有権者は官僚に「先生にお願いしておいたから!」と言い、官僚は政治家に「先生通しましたから!」と言い、政治家は有権者に「議員立法できましたから!」と言う。いわば立法の空中戦だ。

●ホンモノの議員立法こそが政治主導
以上述べたように、細部を絶対に政治に渡さない「閣法成立の過程」は有権者の多数派の利益を骨抜きにする(=一部の利権集団の利害を代表する)官僚システムの悪い部分を露出させやすい。だからこそ議員立法をホンモノにしなければと思う。これまでの議員立法にありがちな「法律つくりました!」という有権者アピールではなく、現実に電力の地域分散化が起こり、津々浦々に数百の発電・送配電会社が生まれてくるような実効性のある立法を、性根を据えて取り組むホンモノの議員立法が求められる。それができてはじめて政治主導の実現となる。

【報道ウォッチ3】どちらが無責任か?

2013年11月12日 23:34

【平智之の報道ウォッチ3】小泉元首相が先ほど日本記者クラブで「原発はすぐにゼロがいい」「これは壮大な事業だ」という主旨のご発言。これまでは脱原発という表現だったが、明確に「すぐにゼロ」と言われた。極めて現実的だ。原発はすぐにゼロにするから成長が生まれる。地域の成長だ。

●どちらが無責任か?
しばしば、「すぐにゼロと言うならその方法を示さなければ無責任だ」という経済人、コンサルタント、学識者がおられるが意味不明だ。捨てる方法と場所を示さない限り使用済み核燃料を増やす再稼働や新増設を主張することこそが無責任だ。まず止めて、そのうえで、すでに作ってしまった約2万5千トンの使用済み核燃料と44トンの分離済み未照射プルトニウムの対策を人類の英知を結集して考えるしかない。

●発電と廃炉は全く別の技術
たまに、「廃炉や最終処分の技術を保つためにも原発を継続すべき」という発想を聞くが詭弁だ。蒸気でタービンを回す技術と廃炉・最終処分が同じ技術であるわけがない。その点は10月12日、英原子力公社名誉会長のバーバラ・ジャッジ氏が「発電と廃炉とでは必要な技術が全く異なる」と東京で発言している。

●民主党は原発ゼロと言ってない
小泉総理が発言されたことで1つ気になる点がある。それは「野党は全部原発ゼロに賛成だ」「反対は自民党だけ」とのご発言についてだが、実は当時与党の民主党はゼロにするとは言ってない。2012年9月14日に閣議決定された「革新的エネルギー・環境戦略」のなかで、当初は30年代の原発ゼロを法定する『革新的エネルギー・環境戦略推進法案』(いわゆる脱原発法)を速やかに国会に提出するとしていたのが、一晩で速やかに修正され、なんと「30年代にゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」という表現に後退した。「ゼロにするようにがんばってみる」と言ったに過ぎない。当時、菅元首相は間違いなく原発ゼロの法制化を追求しておられた。しかし、おそらく核抑止の発想を持つ一部議員や電力業界の労働組合への配慮から原発ゼロを明言できなかったのではないかと推察する。このあたりの事情「なぜ民主党が原発ゼロの法制化を断念したのか?」が昨日11/11に政府が開示した公文書で明らかにされている。民主党政府は原子力産業を背景とする資源エネルギー庁の巻き返しに屈した。脱官僚と言っていたのに鉄のトライングルを守ってしまった。だから政権を失ったのだ。

【報道ウォッチ2】福島での洋上発電の試み

2013年11月11日 23:32

【報道ウォッチ2】福島県楢葉町の沖合20キロで洋上風力発電の実証実験開始との報道。素晴らしい。まさに復興事業だ。最終的には出力10~30万kWが目標とのこと。出力と利用率で計算すると50基で福島第一原発6基分をカバーできる。波は枯渇しない資源だ。

今回の実験設備である「ふくしま未来」(発電)と「ふくしま絆」(変電)は、まず2,000kWから始められるが最終的には10~30万kWにまで高めていく計画だそうだ。洋上浮力なら陸上風力における高周波問題や破損時の事故リスクも大きく低下する。

たしかに、腐食などで海底とつなぐ鎖の強度は心配だが、その定期点検と交換は、原発の保守に比べればはるかにシンプルだろう。それよりも1基5,000~7,000億円もの電気料金と税金を投入して原発を新増設し、今後40年間にわたり放射性廃棄物を増やすよりも、洋上風力を極める方が環境面でも経済面でもはるかに合理的だ。さらに、ウランは100年程度で使い切るとされる枯渇資源だが、波は枯渇しない。

たとえば、どうせ海面に浮く土台は揺れているので、「ふくしま躍動」などと命名して波力発電(波の運動を回転に変える)設備も付けられればハイブリッド風力発電となる。おそらく洋上の風車を思い浮かべるだけで、海と風だから、いろんな人がいろんなアイデアを発想するだろう。政府にはそういう発想を結集して欲しい。

【報道ウォッチ1】国会議員が専門家に任せるリスク

2013年11月11日 20:42

【平智之の報道ウォッチ1】国内の脱原発団体に20万通を超えるメール攻撃との報道。強く憂慮するが、改めて原発や社会インフラへのサイバーテロを憂慮する。たとえばメルトダウンとスマートグリッドとマイナンバーのテロ被害は同様に甚大ではないか。

●サイバー攻撃はウラン濃縮も止められる
もちろん今回の国内原発団体へのメール攻撃を強く憂慮するが、改めてサイバーテロが人や団体ではなく原発関連施設をターゲットとする場合の甚大なリスクを考えたい。直近では2010年に起こったイラン濃縮ウラン施設へのサイバーテロ事件があった。ウラン濃縮のための遠心分離装置がウィルスの侵入で一部(約5,000基中の約1,000基)使用不能になるという事件だった。

●世界初のサイバーミサイルStuxnet
Stuxnet(スタクスネット)と呼ばれるコンピュータウィルスの仕業で、世界初のサイバーミサイルと呼ばれている。ウラン濃縮装置だけをピンポイントでターゲットにするからミサイルに例えられる。記事によると遠心分離機の回転数を狂わせるようだ。発見者はベラルーシのアンチウィルスソフトの企業であり、するとこのウィスルは外部(ネット環境)に漏れ出していたことになる。イラン濃縮施設はネットと遮断されているとされ、何者かが施設内の端末にUSB等で流し込んだ可能性が指摘されているので、そもそも外部には出ない。もちろん開発者も出さないから、これはバイオハザードのような意図せざる漏出の可能性。


●原発を対象とするサイバーミサイルがあったら
当時、日本ではほとんど深刻な報道にならなかった。イランの核開発疑惑に揺れる米国の問題だろうという程度の認識だったのではないか。しかしミサイルがマーキングで攻撃対象を変えられるように、サイバーミサイルが商用原発のシステムを対象にできない道理はない。「ファイアウォールは万全です」など通用しない。ネットから遮断していてもイランの施設は感染したとされている。

●エネルギー基本計画
実はこの事件と相前後して、日本では現行のエネルギー基本計画が閣議決定されている。2030年までに国内原発を14基増設するという"原発ルネサンス"計画だった。この時、私は衆議院経済産業委員として政策会議で「事故が起こった際の甚大な事故を考慮すればこんな増設はありえない」と何度も繰り返し反対意見を述べたが議事録にも残っていない。そのまますんなりと原発推進が閣議決定された。それから8ヶ月後に発生した3.11原発事故はだから痛恨の極みだ。そして今、本年中に策定が予定されている新エネルギー基本計画では「原発の新増設を書き込む」という議論が高まっている。


●「日本版NSCと特定秘密保護法のセット論」を事態想定で議論すべき
もし当時、日本版NSCがあればどうなっただろうか。常識的には、政府がNSCに対してStuxnetの調査を指示し、NSAで国内原発に対する影響を精査するであろう。防衛省、総務省、経産省、外務省等が緊密に連携をとって政府に答申などするだろう。不確実性が大きすぎるのだからエネルギー基本計画の2030年14基増設計画に待ったをかけるのが普通のリスクマネジメントだ。しかし現行の粗っぽい制度設計だと逆に、もし政府が原発新増設を妨げる要因としてStuxnetを煙たがれば、たとえ気付いた野党から指摘されても、「Stuxnetは遠心分離装置のみを対象とし、我が国の商用原発そのものには影響は及ばないとの報告をNSCから受けた」などとし、しかもその根拠は特定秘密に指定されているから開示できないとして、そのまま強引に原発ルネサンスを押し通したかもしれない。NSCと特定秘密のセットは理念法としてだけでなく、このような具体的な事態想定でも議論すべきもので、すると1・2年など当たり前にかかるだろう。ちなみにStuxnetの情報を米軍前幹部がNYタイムスの記者に漏洩したという疑惑が持ち上がっており、スノーデン氏に限らず、日本がお手本とする米国でも情報管理は至難である。


●スマートグリッドが感染したら?
実は、このようなサイバーミサイルの存在は、原発や核兵器関連施設だけでなく、社会インフラのシステムにも大いに影響する。私の認識に間違いがあればご指摘いただきたいが、たとえばスマートグリッドが整備されて電力の過不足が広域ネット上で調整される仕組みがあるとして、そのシステムに障害を起こすための専用ウィルスが開発され、まかれたらどうなるか。逆潮流を誘発するウィスル、ピンポイントで過電流を誘発するウィスル、電力過不足の情報を一斉に書き換えるウィルスなど、都市機能の崩壊にもつながる危険性は本当にないのか?現在の古いしくみのままの方が比較として頑健ではないか?このあたりは送配電等の専門家にご議論いただきたい。ちなみに、「スマートグリッドを取り巻くサイバー脅威レポートとマカフィーの取り組み」も公表されている。


●マイナンバーが感染したら?
マイナンバーも同様に深刻だと感じている。米国の社会保障番号は社会保障と納税の情報がリンクしている。私も滞米中に割り振られたが移民情報もリンクしていたかもしれない。留学生だけの税還付があった。しかし、議員在職中にマイナンバー制度のシステムのスキーム(大枠の考え方)に携わる研究者の話を聞いた時は、マイナンバーが戸籍、住民票、医療記録などにまで、米国の社会保障番号よりも広範囲に利用される可能性が説明されていた印象を持った。データは別々の場所に管理され、管理者も別々だから大丈夫というような図だったと思うが、その時私はまったく納得できなかった。保健医療、社会保障、戸籍・住民票、所得・納税などの個々の巨大なデータベースの共通鍵が絶対に作れない、というしくみではなかったと記憶する。まるで5重の壁で大丈夫という原発と同様のロジックだったと思う。このあたりも専門家による議論喚起が必要だ。黙っていれば巨額の仕事になるから専門家ほど"唇寒し"だが、ここが関所だ。ちなみに総務省の官僚は、その積極派の研究者に対して慎重な姿勢を示していたと思う。いずれにしても、マイナンバーのデータは不正取得のリスクだけでなく不正の書き換えで国家的な混乱に陥るリスクを持つ。マイナンバーをターゲットするウィルスも脅威だと思う。

●電子マネーで数兆円の偽造は可能か?
かなり以前に電子マネーの研究者とお話した際、「もし電子マネーが偽造されたら何十兆円でもすぐに作れますね」と単純な質問をしたら、「大丈夫です。電子マネーのガード機能により、その偽造マネーが使われれば追跡調査できるのです」と言われて沈黙したことがある。とりあえず使えるのか。捕まる人を別に用意する共同共謀には対抗できない。犯行を経験しながら改良していくことになる。

●国会議員が専門家に任せるリスク
それが深刻なのだ。原発も同じで、政府も経産省も規制委も3.11の経験により「原発の過酷事故は起こりえる」という大転換をしたので、今後はメルトダウンを経験しながら改良を続けていくという宣言をしたことになる。恐ろしい限りだ。1回のメルトダウン事故が人と環境に与えるリスクはいかなる計算をしても経済性がない。経験が許されるものではない。メルトダウンを起こしながら改良するという発想自体が成り立たないのに、それをやろうとしている。スマートグリッドにもマイナンバーにも同様の怖さを感じる。その法律をつくる国会議員が自分の常識を使わないで「専門家に任せる」のだから。私は国会で何度となく国会議員から聞いた。「平さん、これは専門家じゃないとわからないよ。」

「4兆円近い国富が逃げる」は間違い

2013年11月 5日 23:31

東電燃料費の構成.JPG


「(脱原発で)4兆円近い国富が逃げる」と言う説があるが、東電の決算書を見ると火力の炊き増しによる燃料費増は50~60%で、残りの半分は円安と原油CIF価格の上昇が原因。安倍総理はアベノミクスも国富流出の原因だという点に留意されたい。

●すべてが火力の炊き増しのせいではない
「4兆円の国富流出論」が根強いので調べてみた。東電の2012年3月期(2011年度)決算を見ると、燃料費増加がそのまま原発ゼロの影響ではないと明記されている。3.11直前の2010年度の燃料費(1兆4,821億円)から次年度の2011年度の燃料費(約2兆2,869億円)へと約8千億円増加している。しかし、この8千億円がすべて原発の火力発電代替によるのではない。

●8千億円のうち5千億円が火力の影響
東電の2012年3月期の決算書によると、燃料費増8,000億円の構成を以下のように記している。

【消費面】
・電力需要の減       2,790億円
・原子力発電電力量の減  -5,060億円
・融通、他社受電の減など -1,850億円
【価格面】
・為替レートの円高化   1,070億円
・原油CIF価格の上昇など -5,000億円

要約すると、消費面では節電・省エネ等で使用電力が減ったので2,790億円の燃料費が減少し、また価格面では円高で円ベースの調達価格が安くなり1,070億円の燃料費が減少した。一方、消費面では原発を火力に代替にした炊き増し分で5,060億円が増加し、価格面では原油CIF価格の上昇で5,000億円増加した。以上により東電は、純粋に原発発電量の減少が原因となる燃料費増は全体8,000億円のうち5,060億円(つまり約6割)だとしている。
次年度の2013年3月期の決算書も同じだ。燃料費は2012年度から5,016億円増加しているが、そのうち3,090億円(約6割)が原発電力量の減少による影響と分析している。

●2010年度から2012年度の燃料費増は3兆4千億円
各電力会社から公表されている決算資料の収支比較表(個別)で各年度の燃料費がわかる。9電力の燃料費合計は2010年度が3兆6199億円、2012年度が7兆283億円。よって2010年度~2012年度で燃料費は3兆4千億円増加した。

●国富流出の半分はアベノミクス
重要なことは、2012年度の段階で、原発は大飯原発以外停止しており、ほぼ原発の発電量はない。(対2010年で約6%に減少)つまり、2013年度は原発代替の余地がないのだ。原発から火力に代替するシフトは2012年でほぼ終わっている。もうひとつ重要なことは、2013年度の当初からアベノミクスの1本目の矢である量的緩和がはじまり、一気に円安に誘導された。おそらくスポット分の燃料調達コストが急激に上昇したであろう。以上により、もし政府の予測通り2010年度から2013年度の燃料費増加が4兆円になるのだとしたら、2012年度までの増加3兆4千億円からのさらなる追加分である6千億円の多くの部分は円安による上昇であろう。以上を整理すると、2010年度~2012年度の燃料費増3兆4千億円のうち、火力炊き増しによる燃料費増は60%の2兆円。2010年度~2013年度は火力代替がさほど増えないので、燃料費増4兆のうち、引き続き2兆強が火力炊き増し分であり、残りの2兆弱がすべて円安と原油CIF価格の上昇によるものだろう予測する。つまり、国富流出の半分はアベノミクスに起因する。

ページの先頭に戻る