平智之の活動ブログ

「4兆円近い国富が逃げる」は間違い

2013年11月 5日 23:31

東電燃料費の構成.JPG


「(脱原発で)4兆円近い国富が逃げる」と言う説があるが、東電の決算書を見ると火力の炊き増しによる燃料費増は50~60%で、残りの半分は円安と原油CIF価格の上昇が原因。安倍総理はアベノミクスも国富流出の原因だという点に留意されたい。

●すべてが火力の炊き増しのせいではない
「4兆円の国富流出論」が根強いので調べてみた。東電の2012年3月期(2011年度)決算を見ると、燃料費増加がそのまま原発ゼロの影響ではないと明記されている。3.11直前の2010年度の燃料費(1兆4,821億円)から次年度の2011年度の燃料費(約2兆2,869億円)へと約8千億円増加している。しかし、この8千億円がすべて原発の火力発電代替によるのではない。

●8千億円のうち5千億円が火力の影響
東電の2012年3月期の決算書によると、燃料費増8,000億円の構成を以下のように記している。

【消費面】
・電力需要の減       2,790億円
・原子力発電電力量の減  -5,060億円
・融通、他社受電の減など -1,850億円
【価格面】
・為替レートの円高化   1,070億円
・原油CIF価格の上昇など -5,000億円

要約すると、消費面では節電・省エネ等で使用電力が減ったので2,790億円の燃料費が減少し、また価格面では円高で円ベースの調達価格が安くなり1,070億円の燃料費が減少した。一方、消費面では原発を火力に代替にした炊き増し分で5,060億円が増加し、価格面では原油CIF価格の上昇で5,000億円増加した。以上により東電は、純粋に原発発電量の減少が原因となる燃料費増は全体8,000億円のうち5,060億円(つまり約6割)だとしている。
次年度の2013年3月期の決算書も同じだ。燃料費は2012年度から5,016億円増加しているが、そのうち3,090億円(約6割)が原発電力量の減少による影響と分析している。

●2010年度から2012年度の燃料費増は3兆4千億円
各電力会社から公表されている決算資料の収支比較表(個別)で各年度の燃料費がわかる。9電力の燃料費合計は2010年度が3兆6199億円、2012年度が7兆283億円。よって2010年度~2012年度で燃料費は3兆4千億円増加した。

●国富流出の半分はアベノミクス
重要なことは、2012年度の段階で、原発は大飯原発以外停止しており、ほぼ原発の発電量はない。(対2010年で約6%に減少)つまり、2013年度は原発代替の余地がないのだ。原発から火力に代替するシフトは2012年でほぼ終わっている。もうひとつ重要なことは、2013年度の当初からアベノミクスの1本目の矢である量的緩和がはじまり、一気に円安に誘導された。おそらくスポット分の燃料調達コストが急激に上昇したであろう。以上により、もし政府の予測通り2010年度から2013年度の燃料費増加が4兆円になるのだとしたら、2012年度までの増加3兆4千億円からのさらなる追加分である6千億円の多くの部分は円安による上昇であろう。以上を整理すると、2010年度~2012年度の燃料費増3兆4千億円のうち、火力炊き増しによる燃料費増は60%の2兆円。2010年度~2013年度は火力代替がさほど増えないので、燃料費増4兆のうち、引き続き2兆強が火力炊き増し分であり、残りの2兆弱がすべて円安と原油CIF価格の上昇によるものだろう予測する。つまり、国富流出の半分はアベノミクスに起因する。

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