平智之の活動ブログ

【報道ウォッチ4】ホンモノの議員立法を

2013年11月13日 23:36

【平智之の報道ウォッチ4】昨日13日、電力改革の法案が可決。しかし法改正は単なる入り口。原発ホワイトアウトp13⇒「素人の政治家や記者には小売り自由化や発送電分離の制度設計の細部の書きぶりによって、電力会社の独占力がどれほど維持されるのかなど、わかりはしないのだ。」

●絶対に細部は渡さない
現役経産官僚が執筆したとされる小説「原発ホワイトアウト」には、上掲に続けてこうある。「この電力システム改革のゲームには、電力会社や政治家が参戦する。しかし、制度の細部の決定権を最後の最後まで渡さないことが官僚のパワーの源泉なのだ。」そのとおりだ。以下に、すこし細かい話で読みづらいと思うが、「やったフリ」の掛け声だけに終わらない電力システム改革のための「ホンモノの議員立法」について述べたい。

●理念ではなく手続き
議員在職中、私も官僚から言われたことがある。「議員の皆さんには国の方向性の大枠を示していただきたい」「細かいことは我々に任せてください」と。そして「責任はこっちが取る、後は君たちに任せると言ってくれる政治家が立派な政治家だ」と。危ない。そういう法制度分野も確かにあると思うが電力システム改革には当てはまらない。システム改革は理念法ではない。「改革=手続き」そのものであり、改革の成否はすべて細部に宿る。改革したくない官僚に細部を任せたら改革はほぼ間違いなく張りぼてになる。「やったフリ」で終わる。

●数百の地域発電・送配電会社の育成
私は今回の電力システム改革ブームで、政治家が「60年来の電力独占に風穴を開けました!」と有権者にアピールするだけで、実態はお茶を濁すばかりか、場合によれば電力独占をさらに深化させて巨大化させてしまうリスクすら懸念する。もちろん私は発送電分離に賛成だが、それは政治が細部の煮詰めで官僚と一緒に汗をかく前提だ。地元に帰って「皆さん私がやりました!」と有権者アピールだけして実際に汗をかく気がないなら、発送電一体のままで発電・送電・配電をまとめて規制強化するほうが有効だろう。支配構造が連携してバラバラに存在したらかえって規制しにくい。重要なことは、発送電分離は誘導政策の選択肢のひとつであり、最終目標は戦前のごとく数百の地域発電・送配電会社を存立させるような市場の育成(小さい電力会社を優遇する非対称規制)だろう。

●申請の書式や検査のチェックリストに現れる
こうした法制度の細部論は、議員在職中も何度も主張してきたつもりだ。拙著「禁原発と成長戦略」(明石書店)p128でも「運用の細部を見なければ法律はつくれない」と題して次のように書いた。「法律は大枠であり、法律の実態はむしろ行政内部で策定される内部規則(告示、要綱、要領、運用ガイドライン等)にありました」「法の実効は法律の条文より申請用紙の書式や検査業務のチェックリストなどに表れます」と。

●ストーカー規制法の細部へ
同じく拙著「なぜ少数派に政治が動かされるのか?」(ディスカヴァー携書)p148には厳しい表現だが議員立法についてこう書いた。「官僚としては「先生の顔をたててやっておきました」といった程度の法律もあるだろう。法律のプロ集団である官僚からすれば、陳情・要望を受けて、偏った知識と理念だけで立法しようとする国会議員の法案など、その程度にしか見えない(後略)」。「(議員立法である)ストーカー規制法にしても、それで悲惨な事件がなくなったかというと、残念ながらそうではない。(中略)その理由は(中略)警察内部の手続きまで規則化できていないからだと思う」と。もちろんストーカー規制法は極めて重要な法律で、議員立法ならではの貴重な立法だが、引き続く事件を考えるなら、政治が立法時に戻り、あらためて関係部局の官僚とともに細部の煮詰め直しをすべきではないのか。「誰が悪い」ということとは別に、早急に「警察の現場が動きやすい規則と予算」をどうやってつくるかという細部の議論が求められていると思う。

●立法の空中戦
国会議員が実効性のある法律策定に関与しない(できない)という現状は根が深い。議員立法の場合、まず有権者が立法者である国会議員に陳情・要望して「法律を作ってもらおう、変えてもらおう」と地元事務所で、あるいは東京の会館で訴求する。その議員が与党幹部なら政府の閣議決定案件(政府がやると決める法律=閣法)になるかもしれないが、それは稀であり、どうしてもというなら「議員立法で」となる。しかし官僚からすれば、それが閣法と同様の予算根拠のない議員立法であれば適当に考えるだろう。議員立法は、実はほとんどが時間切れの廃案になるが、たとえうまくいっても理念だけの張りぼて法になりがちである。理念は素晴らしいが実効性が伴わない。そして、官僚も議員も細部の煮詰めをやらずに表面的にお茶を濁したにも関わらず、有権者は官僚に「先生にお願いしておいたから!」と言い、官僚は政治家に「先生通しましたから!」と言い、政治家は有権者に「議員立法できましたから!」と言う。いわば立法の空中戦だ。

●ホンモノの議員立法こそが政治主導
以上述べたように、細部を絶対に政治に渡さない「閣法成立の過程」は有権者の多数派の利益を骨抜きにする(=一部の利権集団の利害を代表する)官僚システムの悪い部分を露出させやすい。だからこそ議員立法をホンモノにしなければと思う。これまでの議員立法にありがちな「法律つくりました!」という有権者アピールではなく、現実に電力の地域分散化が起こり、津々浦々に数百の発電・送配電会社が生まれてくるような実効性のある立法を、性根を据えて取り組むホンモノの議員立法が求められる。それができてはじめて政治主導の実現となる。

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