平智之の活動ブログ

【報道ウォッチ7】秘密保持の規制強化は既存の法律で

2013年11月19日 23:42

【平智之の報道ウォッチ7】秘密保護法案の与野党協議が大詰めとの報道。私は十分に議論をフォローできないままだ。そもそも、なぜこのような特例法が必要なのか理解できていない。「特定秘密」など持ち出さなくても、国家公務員法、情報公開法、公文書管理法の一部改正(一括法)で十分ではないか。

●国家公務員法でいいのでは?
今回の秘密保護法案の報道で「機密を漏らした国家公務員の厳罰化」という見出しをよく見る。私は、それならば国家公務員法の守秘義務規定の一部改正で良いと思うが、内閣委員会ではどのような議論がなされてきたのだろうか。

●有識者会議は違うと言う
有識者会議は報告書(H23年8月)*1で「本法制は、国の利益や国民の安全の確保といった観点から特別秘密の漏えいを防止することを目的としており、主に服務規律の維持を目的として守秘義務を定める国家公務員法等とは趣旨が異なるため、国家公務員法等の改正により本法制を実現することは適当ではない。」としている。つまり「国家公務員法ではやりません、新たな法律が必要です」と結論している。この点が私にはよくわからない。

*1 『秘密保全のための法制の在り方について(報告書)』、平成23年8月8日、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議

●服務規律で特別秘密を守ればいい
「国の利益や国民の安全の確保といった観点」と「服務規律の維持」が異なる趣旨なのだろうか。なぜ国家公務員法第百条で「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と規定しているか。それは国家公務員に課せられる国の利益や国民の安全の確保という職務のためであろう。特別なことを考えずに、ストレートに国の利益や国民の安全の確保のために、国家公務員法のなかで国家公務員の守秘義務を厳罰化すれば、有識者会議が求める「特別秘密の漏えい」が防止できる。

●国家公務員法での厳罰化でよいのでは?
つまり、今回の秘密保護法案では特定秘密を漏らした場合は最高十年の懲役と厳罰化しているが、もともと国家公務員法第百九条第十二号には秘密を漏えいした国家公務員に対して「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」という刑事罰が用意されているので、それを一年⇒十年へ強化すればよいのではないか。

●指定秘密は不要となる
その際、政府がわざわざ「特に重要な秘密」を指定しなくても、国家公務員が職務上知ることのできるすべての秘密で漏えいを厳罰化(最高懲役年数と罰金上限)しておけば、それで済む。国家公務員法第百条関係に絞っておけば、国家公務員以外の一般人が処罰対象になるのではないか?といった懸念も生じない。

●指定秘密の解除30年も既存の法律で
指定秘密の解除期間についても同様だ。
(1)国の安全
(2)外交
(3)公共の安全及び秩序の維持
のうち、(1)については自衛隊法第96条で防衛秘密に指定できるが、(2)と(3)については現行法がないので、(1)も含めて、まとめて秘密指定できる新規立法が望ましいと政府は主張している。だから秘密保護法案が必要なのだとするのだが、これも私にはよくわからない。そもそも行政行為で作られる文書であるなら、それらは行政文書であり、ならばどのように開示or不開示して、どのように管理するかといったルール化は、行政文書の公開と管理を規制する情報公開法と公文書管理法でまとめてルール化すれば済むのではないだろうか。安全保障、外交、安全・秩序は行政文書という入り口でもともと一つだ。(1)(2)(3)について情報公開法で開示文書と不開示文書の基準を、そして不開示となった文書が何年後に開示されるかを公文書管理法で、それぞれ統一ルール化すれば済む。

●初歩的な議論に理解と納得を
私は委員会での審議や法制局の問題整理を知らないから、おそらく初歩的な議論をしているのだと思う。しかし、これほど強く深く国民の権利に触れる法案である以上、私を含む初歩的な問題意識を有する国民の納得と理解を醸成する時間が必要だ。秘密保護法案の必要性を説く有識者会議の報告書でさえ「ひとたびその運用を誤れば、国民の重要な権利利益を侵害するおそれがないとは言えない」と警告している。あと二週間での法案可決はあまりに拙速と言わざるをえない。

●私権の制限に踏み込んでしまった
全体として今国会の秘密保護法案は「特定秘密」という仰々しい用語を用いて、もともと国家公務員の秘密保持の問題なのに、国民を私権の制限の条件闘争に持ち込んでいるような感じがする。だから議論が必要以上にややこしくなっているという印象だ。上述したとおり、特別も一般もなく、ダメなものはダメというシンプルなルールでいけば、国家公務員が作る公文書に限定することで、既存の法律ですべて対応できるように思える。

●3年後の選挙で問えばどうか
最後に一言付け加えたいが、そもそも本法案は自衛隊法、国家公務員法、情報公開法・公文書管理法等の一部規制に上乗せ規制を行う"特例法"であるから、どうしても急いで新規立法を強行するなら"時限立法"にすべきだと思う。3年後の凍結を本法に書き込んでおく。3年間施行してみて、本当に必要かどうかを3年後にもう一度考える。3年後に選挙の争点の一つにすればいい。国家機密を守ることは必須だが、機密保持の規制法制は常に国民の監視の下にあらねばならない。

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