平智之の活動ブログ

【報道ウォッチ17】真ん中が溶けたら全部溶ける

2014年1月22日 05:09

原発の設計瑕疵 5重の壁.jpg


【平智之の報道ウォッチ17】春以降、次々に再稼働の可能性との報道。何度も問うてきた。原子炉の5重の壁は融点が外に向かって低下。真ん中が溶けたら全部溶ける。物理的に危険な装置が動き始める。脱原発都知事の誕生で流れを変えたい。


●規制委員会委員が「不可能な目標ではない」
規制委員会の委員が夏までの大飯原発再稼働について「不可能な目標ではない」と発言したとの報道。記事によれば、大飯原発だけではなく、「新規制基準の適合性審査を申請した9原発16基のうち、先行して申請があった6原発10基が審査に合格する見通しになった」とある。

●融点が外に向かって低くなっていく
拙著「禁原発と成長戦略」(明石書店)のp16「核燃料を鉄で包むことは不可能」でも述べたが、原発の安全の要とされている5重の壁(炉心を5重に包んでいるので放射能漏れに強いのだという安全設計の根拠)は実はまったく意味がない。上図に示すとおり、真ん中が溶けたら、あとはドミノ倒しのようにすべて溶ける。融点が低くなっていくのだから何重に包んでも意味はない。自分の溶ける温度よりも熱いものを包むことは物理的に不可能だ。つまり、原発の設計がそもそも不可能だと言える。

●実際に起こったこと
世界中が目撃したとおり、これは理屈上の指摘ではなく現実に起こったことだ。福島第一のメルトダウンそのものである。絶対に冷やせる方法は絶対にないから、メルトダウンを回避する安全設計そのものが工学的に不可能だ。ちなみに火力発電所や化学工場等のプラントでも容器・配管等の破裂・破断等の事故は起こり得るが、原発のように長期にわたり熱源が加熱し続ける事象はないだろう。崩壊熱はそれほど恐ろしい。

●新規制基準に適合性がない
安全設計が不可能なのだからメルトダウン型の過酷事故を起こさない方法はない。だから、ひろく指摘されているとおり現行の新規制基準はほぼ無意味である。ポンプ車の高台配備や外部電源は時間稼ぎに過ぎず、防潮堤は地震や運転ミスや材料劣化等に起因する炉心損傷に対して無意味であり、さらにベントは過酷事故時において加圧による爆発を防ぐ一方で甚大な放射能漏えい装置となる。最初から新規制基準に適合性がないのだ。その基準で適合性判断しても無意味だ。

●バックフィットも原理的に危険
繰り返すが、このような設計不可能問題を無視して、適合性のない基準で適合性審査をしているのだから再稼働は止められない。規制委は「基準に従って判断した」と言い、政府は「規制委の判断を尊重した」と言うだろう。脱原発を主張する方のなかには「バックフィットを厳正に運用すれば再稼働はない」という認識もあるが、官僚と学者と技術者による技術基準の恣意的運用には注意を要する。圧力容器と格納容器と建屋で包む炉心は「世界中で設計に欠陥がある」のだから「その時の世界最高水準」も実は「原理的に危険だ」という落とし穴に気づいて欲しい。自分が国政におれば「徹底的に指摘し続けるのに」との忸怩たる思いもある。もっと現場を知る技術者や実務家が国政に行けばとも思う。しかし現実は現実だ。このままでは"落とし穴の技術基準"に惑わされて再稼働を止めることはできないと強く懸念する。

●だからこそ脱原発最優先の都知事誕生を
だからこそ今できることは脱原発都知事を誕生させることだ。電気の大口消費者たる東京都が環境行政の一環で脱原発政策を実施することは有効だ。猪瀬前知事も検討していた自前のガスコンバインド発電、あるいはコジェネ推進、PPS(新電力)による原発以外の電力重視など、消費者としてやれることが多々ある。除染や賠償や防潮堤やベントや破砕帯や汚染水などの国の議論とは別の、「実効性のあるいますぐ脱原発」に踏み出さなければならない。それぞれの立場や付き合いや選好に固執することなく、脱原発最優先の都知事を誕生させること、その点に脱原発を求める都民の力を合わせることを希求する。

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