平智之の活動ブログ

【報道ウォッチ19】 原発ゼロへの責任転嫁こそが経済危機

2014年1月29日 03:26

貿易収支に原発ゼロは関係ない.jpg


「過去最大の貿易収支赤字、主因は原発ゼロ」と報道番組が示唆。しかし財務省貿易統計によれば赤字拡大の主因は日本の経済構造。原発ゼロへの責任転嫁こそが経済危機を生む。

●1979年以来の最高赤字
1月26日、平成25年財務省貿易統計(速報)が公表された。そこには予想されてはいたけれども深刻な数字が報告されている。1979年以降の35年間で貿易収支(輸出―輸入)が最高額の赤字となった。通関ベースで▲11兆4,745億円である。


●原発ゼロは関係ない
上図に示すとおり、輸入数量を対前年で比較するとLNGは0.2%微増でほとんど変わらず、原油にいたっては減少(▲0.6%)している。しかし輸入金額は15%以上も増加。要するに以前のブログ『「4億円の国富が逃げる」は間違い』でも予想したとおり、原発ゼロによる燃料輸入増加はもう止まっており、前年と同規模の数量を高く買っているのが実態。だから燃料費増加の原因はアベノミクスによる円安効果と原油CIF価格の上昇しかなく、2012年から2013年の収支悪化で原発ゼロの関係は極めて薄い。

●「原発ゼロのせいで価格が上昇」もない
それでも原発ゼロが原因だという説がある。原発ゼロの影響により日本が原油やガスを買い増すから市場で単価が高くなるという説だ。しかし上図でわかるとおり、価格上昇は3.11前年の2010年から続いている。米国QE(量的緩和)で溢れ出てくる余剰資金が原油市場に流入すれば当然そうなる。加えてドル建ての燃料費は円安(2012年の約80円平均から2013年の約100円平均)で25%も支払金額が上昇する。3.11以前から続く価格の上昇に加えて、円安の影響が非常に大きいことは明白だ。重ねて2012年から2013年の収支悪化で原発ゼロの関係は極めて薄い。

●経常収支マイナスが危険
政府はこの貿易収支悪化の責任を政局がらみで原発ゼロに転嫁する余裕はないはずだ。一刻も早く輸出または所得収支(海外から受け取る配当や利子等)の拡大を伴う成長戦略を策定し成功させる必要があるが、いまのところ筋道は見えない。万一、経常収支マイナスにでもなれば何が起こるかわからない。

●円安でも輸出は増えない構造
ここ数年の貿易収支悪化が示す通り、生産拠点の海外移転等により、円安だからといって輸出数量が以前ほど増えない経済構造へと深化しつつある。経常収支マイナスが外資の引き揚げによって単に円安と高金利だけを生むとしたら危険だ。原発ゼロを貿易収支悪化の主因と決めつけることは、間違えている以上に、日本経済の構造問題を放置することにつながる。原発ゼロへの責任転嫁は経済危機に直結する。

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