平智之の活動ブログ

2014年3月

【報道ウォッチ27】 再稼働より海外の石炭火力の高効率化

2014年3月27日 03:59

再稼働より海外石炭火力.jpg


与党が新エネルギー基本計画に「原発は低炭素」を追加との報道。CO2抑制のために再稼働の意図。しかし空はつながっている。日本が再稼働で抑制できるCO2は世界のわずか0.3%。むしろ海外の石炭火力の高効率化に貢献すべき。


●「CO2出さない原発が必要」論
「原発はCO2を出さない」「火力を増やすとCO2が増えるから再稼働も仕方ない」という意見がある。「CO2を出さない」はそのとおりだが、「再稼働も仕方ない」には合理的な理由が見当たらない。政府は国民にきちんとした事実とデータを提供すべき。

●放射能とCO2は比較できない
「再稼働も仕方ない」が不合理な理由は二つある。ひとつは、そもそも原発事故による放射能災害で生じる土地と人体に対する甚大なリスクをCO排出抑制のために容認できるのか?という観点。1979年スリーマイル、1986年チェルノブイリ、2011年福島第一と10年に1回過酷事故が起こっている。40年稼働の原発が国内外で増えていくから事故リスクは高まっていく。地球温暖化も致命的だが放射能災害も致命的。比較できる根拠がない。

●空はつながっている
もうひとつは、世界で排出されているCO2が2013年で360億tにも達するとの試算(グローバル・カーボン・プロジェクト)があり、日本の火力炊き増しによる増加分(約1億t、平試算、上図)など世界全体の0.3%に過ぎないという観点。空はつながっている。日本の0.3%を抑制して放射能災害のリスクを抱えるより、世界のCO2排出抑制に貢献する方が理にかなっている。

●中国のCO2対策の方がはるかに重要
たとえば中国への技術協力。環境省公表データによると日本の年間CO2排出量は12~13億t。対して米国と中国だけでも年間およそ120億tも排出しており、2国だけで日本の10倍にも達する。技術移転等により中国の石炭火力発電所のリプレイスメント(高効率化)に尽力する方がはるかに効果的だ。日本の原発再稼働によるCO2抑制の何十倍も効果が見込める。京都メカニズムが中座する今、日本から強く働きかけて、たとえば日米中の環境協力体制を構築することは環境にも成長戦略にも有効だろう。

注)中国はかねて環境技術の連携を日本に要請しているが、日本側が技術リークなどを懸念して二の足を踏んできた。

【報道ウォッチ26】 データが使われない、捨てられる

2014年3月12日 06:18

SPEEDI試算結果図.jpg

福島県が事故直後に削除したSPEEDI試算結果(3/15、18時、2号炉、ヨウ素)


福島県が管理する敷地外14か所のモニタリングポストで事故直後の放射線量が20秒毎に記録されていたと判明。管理者が利用できなかった。事故直後のSPEEDIデータ削除と同根の人災。過酷事故ではデータが使われない、捨てられる。


●14か所のMPで20秒ごとのデータ判明
NHKの取材により福島県が管理するモニタリングポスト(MP)のうち、福島第一原発の敷地外14か所のMPで事故直後の20秒ごとの詳細な放射線量データの存在がわかった。今後の詳細な分析が待たれるが、昨日3/11のNHK報道では、原子炉北西5.6kmのMPで1号機爆発の1時間前にピーク値が観測されていたという。

●役に立たなかったMP
NHKによれば、1号機が爆発した3/12、15時36分の約1時間前にあたる14時40分40秒に4.6mSv/h(最大値)を記録した。これは自然放射線を除いて、8時間屋外16時間木造家屋内と仮定すれば年間29mSvに相当する。このデータが避難等の役に立たなかった。詳細は番組で放送される。

●SPEEDIデータも役に立たなかった
データが役に立たなかった点はSPEEDIも同じだった。当時大きなニュースになった。福島県災害対策本部が事故発生翌日3/12の23時54分から受信がはじまった(県の見解)SPEEDI試算結果の電子メールを削除していた。その検証報告が県HPで公表されている。以下参照。

「SPEEDI電子メール削除問題について」


●なぜ保管しなかったのか
報告によれば86通受信したSPEEDI試算結果のうち65通を消失したとしているが、県が国から送られた緊急の電子メールを削除するだろうか。たとえ当時の担当者が混乱により要不要の判断がつかなかったと仮定しても削除までするか。報告では削除した65通以外の20通はUSBに保管、1通は印刷している。ジャンクメールだとは判断していない。なぜすべて保管しなかったか。

●迅速な避難指示が出せたはず
削除したデータのうち15日夕刻の2号炉からのヨウ素拡散の試算結果を上図に示す。15日は早朝に2号で異音が発生し、4号が爆発した。敷地境界のMPでも高い線量が計測された。図からわかるとおり風は北西(内陸部に向けて)に吹いており、降雪中の風下は明らかに危険だった。文科省原子力安全技術センターは法に基づいて情報提供しており、危険を察知するためのデータはリアルタイムに政府から県および関係市町村に送信(電子メール、FAX等)されていた。しかし県はそのデータ削除していた。データを利用していればより迅速な避難指示が出せたかもしれない。(注:市町村側でメール不達、FAX受信不能もあったとされるが、県災害対策本部から関係市町村に周知する方法はなかったか等が問われるところ。)

●人災は根絶できない
装置であるモニタリングポストは放射線量を計測し、シミュレーションソフトであるSPEEDIは風向きを示していた。しかしその放射線量も風向きも利用者である人間が利用しなかった。何万箇所にモニタリングポストを設置しても、何十万回SPEEDIで風向きを知らせても意味がない。混乱によるうっかりミスであっても、混乱を避けるための隠ぺいであっても、いずれも許されないことだが、いずれかの理由でデータの不使用が起こった。人災だ。装置をいくら世界最高にしても人災は防げない。

●世界最高水準の規制基準の無意味
このブログで何度も述べているが、いくら規制基準の世界最高水準を目指しても意味がない。「安全性の向上」にはなっても「安全の確保」には至らないからだ。大規模な放射能漏えい事故は1回たりとも起こせないのに過酷事故の発生確率はゼロにできない。ベントもポンプ車も防潮堤も電源も、なにをしても過酷事故を「起こしにくくする」に過ぎない。世界最高水準でも事故は起こる。一昨日3/10、日本記者クラブで行われた3人の事故調査委員長(国会、政府、民間)との対談で前NRC委員長のグレゴリー・ヤツコ氏が「事故は起こるものだという理解を持つべき」という趣旨の発言をしている。

●世界最高水準の人間も無意味
ここに人間の不確実性が重なると制御不能となる。データがあっても使わない、装置があっても操作を間違える、そのような人間の性質は制御できない。教育訓練で事故に適切に対処できる有能な人間を育成するという主張もあるが、それは世界最高水準の人間を追求するのと同じだろう。

【報道ウォッチ25】 日本を危険にさらす紛争当事国への武器輸出

2014年3月 3日 23:45

CEAPAD写真.jpg

3月1日「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」(CEAPAD)第二回会合


政府はパレスチナ開発に2億ドルの支援を表明しながら一方で武器輸出規制緩和によりイスラエルへのF35部品供与に道を開こうとしている。一方にお金で一方に武器。武器輸出だけよりも更にアラブと世界の信用を失う。


●F35(次期ステルス戦闘機)の部品
現在、武器輸出三原則のひとつである「紛争当事国に武器を輸出しない」という条件により日本はパレスチナの紛争相手国であるイスラエルに武器輸出できない。ところが政府は、経団連防衛生産委員会からの要望もあり、成長戦略の一環だとしてこの紛争当事国規制を外すという。するとイスラエルへのF35(次期ステルス戦闘機)の部品供与が可能となり、アラブ諸国の大きな脅威になることが懸念されている。

●パレスチナ開発に約200億円
一方で政府は一昨日(3月1日)、安倍政権誕生直後(2013年2月)に日本主導で立ち上げた「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」(CEAPAD)第二回会合の場(ジャカルタ:上写真)で2億ドル(約200億円)をパレスチナ開発に拠出すると表明した。「アジアが協力して中東和平に貢献」という主旨だ。

●一方に武器で一方にお金
こんな話が通じるだろうか。日本の成長戦略(輸出増)のためにイスラエルに武器を輸出し、その一方で、脅威にさらされるパレスチナに対してはキャッシュを払っておくというやり方をアラブの人々はどう思うだろうか。(下図)

●情に厚いパレスチナの人々
実はユダヤの人々と同様にパレスチナの人々も米国をはじめとした先進諸国の各層に存在する。知人から得た印象だが国際的で勤勉で誇り高く情に厚いパレスチナの人々がこの点を見逃すとは思えない。

●なぜアラブの人々が日本に友好的なのか
確かにアラブの人々の日本への友好意識の背景には経済援助もあるだろう。パレスチナだけでも93年から昨年までの支援額は約13億ドル(約1300億円)に達している。しかしそれよりも日本が中東和平問題に「武力介入してこなかった」ことが大きいとされる。

●平和国家の日本人が言うなら
たとえばアフガン紛争当時の日本の国連平和維持軍武装解除部長(伊勢崎賢治氏)は「唯一、武力介入しなかった日本だったからこそ現地のアフガン人武装勢力のところへ丸腰で赴いて武装解除を実現させることができた」という主旨のことを述べている。「平和国家の日本人が言うなら」というイメージが紛争地にも定着している。これは戦後の日本外交が培った成果であり、武力では獲得できない交渉力という点で欧米にはない財産だろう。

●戦後平和外交の廃棄
しかし今、日本はその財産をあっさり放棄しようとしている。イスラエルへの武器輸出を解禁したら、アラブ社会における平和国家日本というイメージは崩れ、これまでの外交努力が育ててきた中東和平推進者というポジションを失う。紛争当事国に対する武器輸出は日本の安全保障を担保する平和外交の強力な切り札を捨て、日本を危険にさらすという点を深刻に考えるべきだ。


CEAPDスピーチ.jpg

ページの先頭に戻る