平智之の活動ブログ

【報道ウォッチ26】 データが使われない、捨てられる

2014年3月12日 06:18

SPEEDI試算結果図.jpg

福島県が事故直後に削除したSPEEDI試算結果(3/15、18時、2号炉、ヨウ素)


福島県が管理する敷地外14か所のモニタリングポストで事故直後の放射線量が20秒毎に記録されていたと判明。管理者が利用できなかった。事故直後のSPEEDIデータ削除と同根の人災。過酷事故ではデータが使われない、捨てられる。


●14か所のMPで20秒ごとのデータ判明
NHKの取材により福島県が管理するモニタリングポスト(MP)のうち、福島第一原発の敷地外14か所のMPで事故直後の20秒ごとの詳細な放射線量データの存在がわかった。今後の詳細な分析が待たれるが、昨日3/11のNHK報道では、原子炉北西5.6kmのMPで1号機爆発の1時間前にピーク値が観測されていたという。

●役に立たなかったMP
NHKによれば、1号機が爆発した3/12、15時36分の約1時間前にあたる14時40分40秒に4.6mSv/h(最大値)を記録した。これは自然放射線を除いて、8時間屋外16時間木造家屋内と仮定すれば年間29mSvに相当する。このデータが避難等の役に立たなかった。詳細は番組で放送される。

●SPEEDIデータも役に立たなかった
データが役に立たなかった点はSPEEDIも同じだった。当時大きなニュースになった。福島県災害対策本部が事故発生翌日3/12の23時54分から受信がはじまった(県の見解)SPEEDI試算結果の電子メールを削除していた。その検証報告が県HPで公表されている。以下参照。

「SPEEDI電子メール削除問題について」


●なぜ保管しなかったのか
報告によれば86通受信したSPEEDI試算結果のうち65通を消失したとしているが、県が国から送られた緊急の電子メールを削除するだろうか。たとえ当時の担当者が混乱により要不要の判断がつかなかったと仮定しても削除までするか。報告では削除した65通以外の20通はUSBに保管、1通は印刷している。ジャンクメールだとは判断していない。なぜすべて保管しなかったか。

●迅速な避難指示が出せたはず
削除したデータのうち15日夕刻の2号炉からのヨウ素拡散の試算結果を上図に示す。15日は早朝に2号で異音が発生し、4号が爆発した。敷地境界のMPでも高い線量が計測された。図からわかるとおり風は北西(内陸部に向けて)に吹いており、降雪中の風下は明らかに危険だった。文科省原子力安全技術センターは法に基づいて情報提供しており、危険を察知するためのデータはリアルタイムに政府から県および関係市町村に送信(電子メール、FAX等)されていた。しかし県はそのデータ削除していた。データを利用していればより迅速な避難指示が出せたかもしれない。(注:市町村側でメール不達、FAX受信不能もあったとされるが、県災害対策本部から関係市町村に周知する方法はなかったか等が問われるところ。)

●人災は根絶できない
装置であるモニタリングポストは放射線量を計測し、シミュレーションソフトであるSPEEDIは風向きを示していた。しかしその放射線量も風向きも利用者である人間が利用しなかった。何万箇所にモニタリングポストを設置しても、何十万回SPEEDIで風向きを知らせても意味がない。混乱によるうっかりミスであっても、混乱を避けるための隠ぺいであっても、いずれも許されないことだが、いずれかの理由でデータの不使用が起こった。人災だ。装置をいくら世界最高にしても人災は防げない。

●世界最高水準の規制基準の無意味
このブログで何度も述べているが、いくら規制基準の世界最高水準を目指しても意味がない。「安全性の向上」にはなっても「安全の確保」には至らないからだ。大規模な放射能漏えい事故は1回たりとも起こせないのに過酷事故の発生確率はゼロにできない。ベントもポンプ車も防潮堤も電源も、なにをしても過酷事故を「起こしにくくする」に過ぎない。世界最高水準でも事故は起こる。一昨日3/10、日本記者クラブで行われた3人の事故調査委員長(国会、政府、民間)との対談で前NRC委員長のグレゴリー・ヤツコ氏が「事故は起こるものだという理解を持つべき」という趣旨の発言をしている。

●世界最高水準の人間も無意味
ここに人間の不確実性が重なると制御不能となる。データがあっても使わない、装置があっても操作を間違える、そのような人間の性質は制御できない。教育訓練で事故に適切に対処できる有能な人間を育成するという主張もあるが、それは世界最高水準の人間を追求するのと同じだろう。

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