平智之の活動ブログ

お金持ちもベーシックインカムを受け取る(BI#5)

2015年2月 8日 05:00

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平智之講演会『ベーシンクインカムを考える(第三回)』(2015/1/31)の内容をスライドごとに解説(その5)


●所得制限にYesか?Noか?
「お金持ちにベーシックインカムは不要だから、やはり収入制限はあったほうがいいと思うか?」と聞かれたらYesかNoか、どちらだろうか。生活保護の場合は、ご存知のとおり所得制限があって基準以下の低所得層だけに給付されるしくみだが、BIはどうだろうか。

●"すべての市民"が重要
ここまで述べてきたように、私は「格差の是正」よりも「働く自由」に重点を置いてBIを考えたいと思っている。その場合にBIを受け取る権利は誰にあるのか。私の場合、BIを受け取る権利は低所得層だけではなく、高所得者も含めた「すべて」の市民にあると考えている。だから答えはNoで、所得制限を設けないからこそBIなのだと考えている。「市民とはだれか」には様々な議論があるが、まずはこの「すべて」ということが重要だと考えている。

●鳩山政権の子ども手当も同じ
この点については鳩山政権の子ども手当でも同じ議論があった。子ども手当は格差の是正を目的とするものではなく、すべての子供に等しく給付されるということから、鳩山総理(当時)は「所得制限を設けないのが基本」という立場を貫こうとしていた。しかし財務省からは財源不足を理由に所得制限を設けざるをえないという立場が表明され、最終的には三党合意で子ども手当が廃止となり、結局は所得制限付きの児童手当に戻された。給付額を抑えたいという動機はとても強いから所得制限を設けないのはとても難しい。

●所得制限で生じる問題
さて、もしBIの受け取りに所得制限を設けると、生活保護等で指摘されるようにいくつもの問題が生じる。たとえば、
1 わざと働かないでBIを受け続けようとする問題(貧困の罠)
2 所得を不正に低く申告してBIを受け取る問題(不正受給)
3 以上により高所得層が制度そのものに不信感と不公平感を持つ問題
4 BI受給者が社会に対して「申し訳ない」という思いを抱く問題(スティグマ)
5 所得制限の基準額が選挙などに政治利用されて利権化する問題

●格差是正なら生活保護の充実が早くて効果的
生活保護制度はそのような所得制限の問題を抱えつつも実施されている。そうした問題を乗り越えてでも実施する義務がある。生存権(憲法25条)だ。そう考えると、もしBIの目的が「格差の是正」ならば、特に新しい制度として国論を挙げてBIを構想しなくても、いまの生活保護制度の捕捉率(実際に生活保護費を受け取っている人/生活保護費を受け取れる人)の向上を目指す方が早くて効果的だ。平成24年度の生活保護費3.7兆円を何倍にしてでも保護が必要な人に給付していくことを目標とすればよい。たとえば捕捉率2割という説があるが、それが本当なら生活保護予算を3.7兆円から18.5兆円(=3.7兆円×5)に拡大する計画を考えることになる。ものすごく巨額な増額だが、そもそもBIがものすごく巨額な予算要求を前提としている。

●「すべての市民」だから新しい制度に
しかし、BIの目的が「格差の是正」ではなく「働く自由」ならば、生活保護と比べる意味はないし、所得制限も必須ではない。これから数十年は続くとされる人口減少期に入ったところで国民全員で一緒に考えてみてはどうか。これまで子どもと高齢者に認められてきた生活保障(子ども手当と年金)を下から上からすべての世代に延長し、かつ所得制限も設けないという新しい制度の価値を検討してみてはどうだろうか。「すべての市民を対象とする現金給付」という新しい制度の価値と実現性だ。これからそのことについて私の考えを述べたい。 (続きはBI#6へ)

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