平智之の活動ブログ

ジョン・ナッシュの訃報に接して

2015年5月28日 21:25

ラフォンの本.jpg

読んでみたらすごく難解だったが、どうしてもその理論を知りたくなった本

●ジャン・ジャック・ラフォン
2003年頃にジャン・ジャック・ラフォンという仏経済学者の学術書を読んだ。国土交通省の委員会委員として入札制度の議論をしていたときだった。なぜ建設業者は赤字覚悟の価格で応札するのか?ダンピングの定義やそれが起こるメカニズムとはなにか?等について法律家、経済学者、民間識者(私の立場)が参加していた。その折に経済書をいろいろ読む中でラフォンの名前を知った。ジャン・ジャック・ルソーに名前が似ているのですぐに覚えた。

●セカンドベストの作り方
昨年のアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞(俗にいうノーベル経済学賞だがノーベル賞ではないようだ)を受賞したジャン・ティロールとラフォンの共著である「調達と規制のインセンティブ理論」(上の写真)はもちろん理解の範囲を超えていたが、なんとかその理論を知りたいと思わせる1冊だった。世のなか契約事でベストは得られない。せいぜいセカンドベスト(次善の成果)が関の山だけど、だったらその関の山であるセカンドベストはどのような契約書で実現できるか?セカンドベストが実現できることも凄い、そんなことを理論的に教えてくれる本だった。独占禁止や不正競争防止は万国共通のルールではなく、各国の文化や各業界の現場ルールに則しているほうがいいと、その時以来思っている。

●お互いに裏切り合うこと
そしてラフォンの本を読む中で、ジョン・ナッシュ(1994ノーベル経済学賞)の理論にも触れることができた。ミクロ経済やゲーム理論を学ぶ順序がでたらめなのだけれども門外漢としてそれが楽しい。お互いにウソをついたり裏切る方が有利になる、つまりお互いに非協力的である方が有利だとみんなが思う"世の中の落としどころ(均衡)"とは何かを理論的に理解させてくれた。

●東アジアの協力解
それどころか、永遠にお付き合い(無限繰返しゲーム)することがお互いにわかっている時、お互いに裏切らないで協力し合った方が全員にとって不利がないという落としどころがあるという理屈(フォークの定理)には夢を感じた。この定理によれば永遠にお隣さんであることを拒否できない日中韓のような東アジアはお互いに協力し合うことが理論的な答えなのだと、その時以来思っている。

●ナッシュの訃報に接して
私とミクロ経済学の接点はとても細い。たまたま関心に任せて何人かの経済学者の理論に触れただけなのに、そんな細いつながりのなかで知りえた二人の知性がもうこの世にいない。ジャン・ジャック・ラフォンは2004年に早逝し、そしてジョン・ナッシュが奥様と共に一昨日交通事故で亡くなった。失うことの寂しさが止まらない。ご冥福をお祈りする。

ページの先頭に戻る