平智之の活動ブログ

格差拡大ではなく貧困層拡大の時代

2016年7月24日 21:11

2000年以降のジニ係数.jpg

「平成23年 所得再分配調査結果」、厚生労働省、平成25年 10月 11日より平が作成


●収入格差は横ばい
 社会全体で見ると2000年以降の日本の格差は、ほぼ横ばい、または格差是正の方向となっている。(上図参照)資産格差も拡大と言える状況ではない。つまり、いまのところ日本は所得・資産ともに「格差が拡大していく社会」ではないようだ。そもそも歴史的に好景気が続く時は格差が拡大し、不景気が続く時は格差が縮小するのが通例で、日本でもバブル期の80年代には格差がゆるやかに拡大し、失われた20年に含まれる2000年以降で格差は拡大してこなかった。すると「格差が拡大したじゃないか。どうしてくれるのだ。」という言い方は「景気がよくなったじゃないか。どうしてくれるのだ。」という理屈と同じになる可能性に注意を要する。言い方を変えると「格差を是正せよ。」という理屈は「景気の拡大を抑えろ。」という理屈になりかねない。日本の場合は格差ではなく別の視点が必要ではないか。

●貧困層が拡大している
 それこそが貧困率の問題だ。低所得層および貧困層の拡大という視点だ。日本は全体として格差拡大社会とは言えないが、その内部で貧困層が拡大する社会である。格差が拡大していないのに低所得層が拡大している。どういうことか。たとえば貧困層から富裕層までの階段があるとすると、その「所得の階段」が沼にズブズブと沈み込むように落下しているようなイメージだろう。沼に沈み込んだ部分(つまり低所得基準未満になった人)がどんどん増えているという状況である。

●貧困対策をどうするのか
 いま求められる経済対策のポイントは、消費拡大や産業分野の景気刺激策も重要だが、同時に早急な救貧と念入りな防貧だろう。とりわけ三つの深刻な貧困率がデータでも浮かび上がっている。
・子供の貧困率
・母子家庭の貧困率
・高齢者(特に女性の単身世帯)の貧困率
こうした低所得層及び貧困層への対策をどうするのか。これは重要な経済政策であるが非常に難しい。単純な問題ではない。富裕層から貧困層に富を移転したらいいのだ、借金が増えてもいいから貧困層に現金・現物給付したらいいのだ、というような単純な問題ではない。

●富の移転が賛同されにくい
 私は日本のように「世界の中くらいの格差レベル」で、なおかつ「格差が拡大しているわけではない社会」における貧困対策は非常に難しいだろうと思っている。米英のように格差が大きな社会ならば、トマ・ピケティが提唱する累進富裕税のように思い切って富裕層の富を貧困層に移転できるかもしれない。低所得層と貧困層が多数派だからだ。しかし日本は米英よりも緩やかな格差社会だ。格差是正の政策に不満を感じる層も多数いることになる。賛同が得られにくい。このような日本社会で貧困対策をどのように創るのか。発明の覚悟が必要だ。タブーを乗り越える経済政策が必要だと思う。

●京都三条ラジオカフェの番組
 以上のようなことをラジオ番組でお話ししました。
ご視聴ください。

平智之の報道ウォッチ【FM79.7MHz京都三条ラジオカフェ】
2016年7月23日放送分「格差拡大ではなく貧困層拡大の時代」

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